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[実録]軽い気持ちでニセ電話占い師に。嘘はいつかバレる。彼女の転落人生と現在とは

情報配信日:2016年3月

ある偽電話占い師の告白

偽電話占い師'エラ'

毎朝3年以上の間、誰かに「この詐欺師!」と怒鳴られて起こされるんじゃないかとびくびくしていた。街を歩いている時には、女性が私の目の前で止まり、「この詐欺師!あなたは詐欺で人を騙す無情の人間よ。」などと腕を掴まれ罵倒されるんではないかとびくびくしながら歩いていた。

実際、私が生活のためにしたことを罵倒するための言葉はいくつもあるだろう。仕事場に行くときは、そういった言葉が常に頭の中に浮かんでいた。しかしいったん仕事にとりかかると、そうした頭の中の言葉は消え去るのである。そんな時は、声も変わって何か自分が別の存在、新しい別の自分になった感覚に陥った。仕事をするときは、'エラ'という偽名を使っていて別人に成りきっていた。

私はお金持ちの家庭に生まれた。

450平方メートルの庭付き、10個のベッドルームを完備した誰しもが羨むような家庭で生まれ育ったのだ。
スイスでスキーをしたり、パリで食事したり、ミラノに買い物に行ったりして日々を満喫していた。17歳の誕生日には、高級スポーツカーを親にプレゼントされた。名の知れていないパリス・ヒルトンといった感じである。むしろニッキー・ヒルトンの方かもしれない。というのも女優になるために私は演劇を学んでいたからである。その時は、輝かしい未来に胸を躍らせていた。

過去の転落

しかし悲劇は突然やってくるものである。

父はある日の会社の取締役会で、父の両親の不正が発覚しクビを言いわたされてしまった。(もともと会社は父の両親のものであった。) さよなら女優業、さようならスイス。
日当たりの良かった大きな家は、薄暗いアパートへと変わってしまった。私の両親の幸せは、離婚という不幸な形で終わってしまった。人生の成功者であった私の父は、何も持っていないただの中年のおじさんとなってしまった。
私は 'エステラ' という本来の自分から、'エラ' という新しい自分に変わったのである。

人々はお金を失うと狡猾になってしまう。私は昔でこそお金持ちの娘であったが、今では何も持っていない。新たな仕事を見つける必要があった。そこで私の得意な演技能力を発揮できる仕事を始めたのである。

27歳のとき、私は内気で優しい性格、これでもかというくらい礼儀正しかった。街中を歩くときは常に頭を下に向けて歩いていた。見知らぬ人にぶつかってしまうと、'すみません、すみません'と謝っていた。ドーナッツを買うときは、'すみません、ドーナッツを貰えますか。' バスの券を買うときは 'すみません、バスの券を頂けますか?'会話の最初には必ず'すみません'を付け、実にシャイで内気な性格だった。

自分が作り上げた 'エラ' という人物像は、かつての私とは程遠いものであったのだ。
私はもっと社交的になる必要があったし、もっと自分に自信を持つ必要があった。私がそれまで知っていたことといえば、何かあれば家政婦を呼びつけることだけだった。私は、自分の性格を新しい生活に適応させなければいけなかった。'エラ' という自ら作り上げた人物像は、過去の不幸を忘れさせてくれるもので、人生の新たな一歩を踏み出す勇気を出させてくれるものであった。心の中でのイメージは、'エラ' という女性は背が高く、少しくせ毛で、目がきらきらしている38歳の女性であった。'エラ'はかつての私とは全く異なる人物像であった。

偽電話占い師'エラ'の誕生

ある日、'人々の様々な悩みを素晴らしい霊能力で解決してくる人を募集' という目につくような電話占いの広告を見つけた。
私は至って現実主義者であったから、そんな霊能力なんかでは人の悩みを解決することはできないと思っていた。

しかしながら、私には演劇を学んで培った演技能力がある。その能力を使って人々を説得させることができるかもしれない。お金のためなら、その仕事をしても良いんじゃないかと思えた。

私は仕事の面接を受けた。

「あなたの声は、私たちがまさに探し求めていたような声です。」

50歳くらいの不自然な笑みを浮かべた雇い主がそう言った。

本来の'エステラ'はそんな声はしていないのだが、'エラ'を演じている時は低くてセクシーな声を意図的に作っていたのである。正直、今でも誰か特別な人と話す時はその低くてセクシーな声を出している。

'運命論者' などという占い師の存在は全く信じていなかった。
しかしそれが自分の仕事になったのである。仕事の日は毎朝6時に起きて、朝食をとり、だぶだぶした服を着て、8時までに家を出るのである。仕事は9時から始まるので、8時から~9時まで散歩をゆっくりしながら仕事場のオフィスまで行っていた。

普段は 'エステラ' として生きて、仕事をするときは 'エラ' に成りきる。電話をとり、タロットカードを目の前で並べることなんてしないで、電話の向こう側のお客の未来を読み取るふりをするのである。今思うと、少なくともタロットカードぐらい支給されていても良かったのではないかと思う。

「エラと申します。どうなさいましたか?」
声のトーンを落として、神秘気的な雰囲気をかもし出す。
私が世界で唯一、悩みから救い出せる存在であると電話の相手に信じ込ませることが重要である。

「私の旦那が浮気しているんじゃないかと心配です。」
こうした悩みを言ってくるお客は多い。

「どのようにあなたを助けることができるかタロットカードで見ていきましょう。」
私はそう返事をする。

「私もあなたの手伝いを必要とします。その悩みを頭で強く思い浮かべてください。その間、タロットカードを机に並べていきます。」

そもそもタロットカードすら持っていない。この間、私は何をしているかというと、キャンディクラッシュというゲームのレベル上げに徹している。仕事中にやりこみすぎて、腕前はプロレベル、ゲーム内でチャンピオンになったこともあるのだ。
仕事を始めた最初の頃は、毎分約10円で雇われていた。電話占いの会社自体は1人のお客から毎分200円ほどの利益を得ていたのだが私は毎分10円。
仕事を始めて6ヶ月経った頃には、毎分50円まで分給が上がっていた。さらに60分間、電話相手を電話につなぎとめることができたらボーナスも支給されていた。

私は高給な詐欺師であった。本来の'エステラ'はこのことを後ろめたく思っていたが、'エラ'は気にも留めていなかった。ほとんどの場合、上手い言葉を並べて無難に仕事をこなしていたのだが、私の分身'エラ'でも対処に困るような電話をいくつか受けたことがある。そうした電話は、'エラ'という人格を押し込めて、'エステラ'という本来の人格を呼び覚ましてしまうのだった。

フィオーナさんは普通の女性ではなかった。20代で裕福なビジネスマンと結婚して、可愛い子供も授かった。40代のときに娘が結婚し、50代の時には娘が妊娠してもうすぐ祖母になろうとしていた。
電話をかけてくる人は、占い師は未来を読んで、自分が直面してる悩みを解決してくれる '策' を提供してくれると信じている。これは実にばかげているのだ。占い師は、未来を読むことなんてできないのだ。

私の霊能力はどうやら信用できると、フィオーナさんはある友人から噂を聞きそれで私に電話をかけてきたのである。
私はそのフィオーナさんの友人をいまだに覚えている。きまって毎週木曜日の午前中に電話をかけてきて、宝くじの数字についてアドバイスを求めてくるのである。
後で分かったことだが、どうやら私の宝くじの予想は当たったことがあって、それからというものフィオーナさんの友人は毎週私に電話をしてきたのである。自分は実は偽占い師ではなく、何らかの霊能力を持っているのではないかと錯覚に陥ったことがある。疑問に思ってるいる人がいるかもしれないからここではっきり言っておく。そう、ばかげているかもしれないが自分には未来を読める不思議な力が備わっているんじゃないかと勘違いしていた時期がある。もちろんそうした幻想は後に無くなるのだが。

「エラと申します。どなさいましたか?」
電話をとるときは毎回こうである。

「この電話は録音されていますか?」
フィオーナさんは尋ねてきた。

「いいえ、そういうことはありません。何かご用でしょうか?どんなことで力になれますか?」

「過去を思い返してみても、眠っている間にみる夢が予言のように思えることがあります。夢でみたことは数日後、何ヶ月後に現実となってしまうのです。この間、孫についての夢をみたんです。孫は成長して大人になったとき、世界を滅ぼしてしまうような悪魔へと変貌していました。このような悪魔は排除しなければなりません。」

とフィオーナさんは言った。

歯医者の予約をとるときと全く同じような冷え切った口調である。悪夢のせいで、孫を殺したがっている精神異常者の対処の方法は誰にも教わらなかった。そうした人と電話越しでも話すのは嫌々していたが、それ以上にその人が殺人を犯すのを傍観したくなかった。

フィオーナさんの思いがけない告白に私は目を覚ました。次に返事をするときには、もうすで'エラ'ではなく現実の'エステラ'となっていた。

「タロットカードを広げました。どうやらフィオーナさん、あなたの夢は本当なのかもしれません。確かに、お孫さんの横に悪魔のカードが並んでいるのが見えます。しかし、あなたのお孫さんが同じような悪魔になるという未来は見えません。むしろお孫さんは、世界の悪魔を倒し平和を守ってくれるヒーローとなることでしょう。悪と戦う神聖なヒーロー、いわば 'エンジェル'です。あなたのお孫さんは悪魔になんか決して成りません。」

そう私が言うと、フィオーナは泣き出してしまった。
どうやらフィオーナさんは私の話を信じたようで、さらにその後2時間ほどどうでも良い話を聞かされるはめになった。ある孫の命を救い、さらにその長時間の電話でボーナスもゲットしたのである。フィオーナさんはその後、生まれてくる孫の顔をみることなく癌で亡くなってしまった。ちなみにお孫さんの名前は'エンジェル'と名づけられている。

嘘はいつかバレる

朝起きると憂鬱な気分になって、どうしても仕事をさぼりたい欲にしばしば駆られた。病欠の電話をかけて、仕事をさぼり、ゆっくり家でテレビ鑑賞を楽しみたかった。
しかし結局、仕事をさぼったことは1度もなかった。
内なる 'エラ' が貪欲に電話占いの相手を欲していたのである。

仕事場の椅子に腰掛けるとすぐさま電話が鳴った。その電話をとると、電話の向こう側で泣き声が聞こえた。

「子供が行方不明になってしまったんです。」
彼女は聞き取りにくい声で確かにそう言った。

公園で私の横で遊んでいたんです。そして気づいたら子供がいなくなっていました。彼女をどうか見つけてください!さもなければ夫に殺されてしまいます!」
私はそれを聞くと、手の力がスッと抜けて、電話の受話器を落としてしまった。

一体なんとアドバイスすればいいのか?
分からない。
警察を呼ぶべきか?子供は安全なのか?私はクビになってしまうのか?警察やどこかに電話をかけることは禁止されていた。一瞬にして様々なことが頭を巡った。

家族のパニックには慣れていたつもりであった。家族の不幸について一冊の本を書けるくらいだ。しかし私は不覚にも数秒の間、頭が真っ白になって一瞬だけ気絶してしまった。幸い周りの人は誰も気づいていなかった。
受話器を再度耳に当て、電話を保留にし、自分の携帯から緊急通報ダイヤルをまわした。警察に、自分は電話占いの仕事をしている者だと名乗り、子供の母親の電話番号を伝えた。

「行方不明の子供を捜している女性から電話がありました。パニック状態に陥って、警察に電話する前に私に電話をかけてしまったようです。お願いですから、この後母親に電話をかけて詳細を聞いてください。そして子供をできるだけ早く見つけてあげてくださいお願いします。」

私は深呼吸をして再び母親との電話に戻った。その時はもう'エラ'ではなく'エステラ'に戻っていた。

「お待たせしてすみません。それで、私には何ができますでしょうか?」
普段の声のトーン、落ち着いた声でそう尋ねた。

「緊急のケースであるみたいなので、私もできるだけ速くタロットカードで占いますね。ええっと、私には警察が数分以内にあなたに電話をかけてくるのが見えます。警察はきっとあなたの力になってくれ、子供さんを見つけ出してくれることでしょう。私のタロットカードもあなたに力を送ります。幸運あれ。」
そう言って私は電話を切った。

その後なにが起こったか説明しよう。警察は、その母親にどういう経緯で電話をかけたかという事をご丁寧にも説明した。子供は実際かくれんぼをしていただけで、その後20分もしないで母親のもとに戻ってきた。私は仕事中に霊能力に頼らず、警察を頼っていたことがばれてしまったのである。
この件を仕事のマネージャーに知られて私は仕事をクビになった。

クビになった後の生活はというと、自分で料理したものを食べたり、ルームメイトとボードゲームをしたり日々を楽しんでいた。唯一、心残りとなっていることは自ら仕事を辞めるというより、クビという形で仕事をやめざるを得なくなってしまったということだ。

もしクビにならなかったら自ら電話占いの仕事を辞めていただろうか?
私はそうは思わない。

今はウエイトレスの仕事をしている。電話占いをしていた時のおよそ3分の1ほどの給料である。
電話占いをしていた時の同僚に、今でも私と電話で話したいと言ってくれるお客がいるそうである。
電話占いの仕事は決して誇れるようなものではなかったが、自分がその仕事に向いていたと気づけたのは少なくとも慰めにはなった。

'エラ' のことは一切考えなくなった。ある日、仕事中に席に腰掛けている'エラ' のような女性を見つけた。きらきらした目で私のことを見つめ、まるでこの世全てのことを知っていて、運命を言い当てることができると人に信じ込ませてしまうような風貌であった。私はその女性の注文をとった。彼女は低く官能的な声で、1杯の紅茶を注文した。
彼女はその後、霊能力で紅茶の葉の産地を調べるかのように、じっと紅茶を見つめていた。

via:Confessions of a Phony Telephone Psychic – Narratively/Estela Labere/ translated by sirokuma / edited by nao

※画像は全てイメージです。


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