酵素-レンニン(レンネット)とは

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レンニンとは

レンニンといってあまりピンとこない人も多いでしょう。これがレンネットというような言葉ではわかりやすいかもしれません。これは共に同じことを示しており、食品学で出てくる専門用語になります。

レンニンとはチーズを作る際に使われる凝乳酵素のことです。これがあることで、原料乳である生乳を固めることができるのです。
それでは、このレンニンというのは何から取れるのでしょうか。いくつかの種類があります。

以前 ヨーロッパではレンニンを動物から取ったもので作っていました。子牛や山羊、羊といった動物の胃から抽出される酵素であり、特に子牛の第4胃であるギアラから抽出したものは、たんぱく質分解酵素(キモシン)が豊富に含まれているのです。山羊や羊のレンニンは苦味があり、牛のものは味がマイルドになるため近年は子牛が主流です。

しかし、子牛のレンニンといっても、生後10~30日の子牛を殺して胃を取り出す必要があり、貴重でもあり、また倫理的な問題もあるので、安定した供給ができなくなり、酪農家に大きな負担がかかってしまいました。

そこで1960年代に代替え品が使われるようになります。
特に注目されるようになったのが微生物レンニンで、カビの生産する凝乳酵素の一種です。微生物のものの性質は牛などの動物性のレンネットの性質と非常によく似ていて、ムコールペプシンと呼ばれる酸性プロテアーゼが凝乳してくれる役割を果たします。

この微生物のレンニンを発見したのが東京大学の博士で、子牛のレンネットに似た凝乳酵素を含むカビを土壌から発見したのがきっかけとなり、日本の会社によって製品化されました。
これはタンクの中で大量に培養することができるため、価格が安くなっています。

最近では植物由来のものも出てきています。使われる植物はパパイヤやイチジク、パイナップルなどです。
一般的に植物性のもので作られた場合には淡白な味のものに仕上がります。宗教上の理由で牛の胃を使えない国では古くから研究が行われていますので、ベジタリアンの人には植物性のものを使ったチーズが良いでしょう。

しかし、国内では表示の義務がなく、実際には動物由来なのか、微生物由来なのか、遺伝子組み換え由来なのかということが消費者にはわからないような状態なのです。

植物性のもの、微生物レンニン、遺伝子組み換え微生物レンニンといったものは、世界的にみると、子牛の動物性のレンニンは1割、微生物45%、遺伝子組み換えが45%くらいといったシェアの状態になります。(2015年以前)

このように、レンニンというのは、一般的にはレンネットといわれるものであり、チーズ作りには欠かせないものであるといえるのです。酸凝固でできるカッテージチーズなどもあるのですが、ほとんどはレンネットを使ったチーズとなります。

レンニンの役割

そのレンニン(=レンネット)の役割ですが、原料乳である生乳のたんぱく質を固める役割をします。また、レンニンを使用したチーズを食べることにより、人間の胃の中を保護しながら、消化していくことができます。

チーズはまず使う器具の消毒から始め、器具の殺菌をしたら33度ほどの牛乳をそこへ投入し、乳酸菌を入れます。
そして次がいよいよレンニンを入れる番です。レンニンと乳酸菌はよくかき混ぜてそのまま1時間ほど置いておきます。
その後、牛乳の固まり具合を確認します。
この時はまだ牛乳プリンのような感じなので、それをサイコロ状にカットし、ホエーを抜きます。このホエーを抜く量によってチーズの固さが決まります。

チーズの固さはレンニンによって決まるわけではありません。
ホエーを抜いたら牛乳プリン状態のものを型に入れ、すぐにひっくり返します。これは水分を均等にするためです。
4、5時間したらまたひっくり返します。型はこの時にはずしてしまいます。翌日、形を整えて塩をふりかけた後で白カビもふりかけます。
2、3回ひっくり返した後、醗酵室で寝かせて醗酵させます。
1週間後にはチーズが完成しています。

レンニンは主成分にキモシンというタンパク質分解酵素があります。
キモシンを9割型含み、たんぱく質分解酵素であるペプシンを1割含んでいますが、これが成長してしまった一ヶ月以上の牛では、草を食べるようになるため、ペプシンが多くなり凝乳しなくなってしまうので、生後10~30日の子牛から取るのです。
このキモシンが牛乳の中のタンパク質を一部分解して水に溶けにくいものにしてくれます。溶けにくいものとなったものにカルシウムイオンが働くことによって、牛乳が固まりチーズのもとである「カード」になるのです。
レンニンの作用により、乳、脱脂乳、部分脱脂乳、クリーム、ホエークリーム、バターミルクや混合物であっても凝固させる役割があるので「カード」(凝固物)とホエー(乳清)を分離させることができるわけです。

レンニンを多く使えば固めに仕上がり、苦味が出て、少なければやわらかめに仕上がります。通常、チーズを作るときには、原料乳を乳酸発酵してからレンニンを加えるという流れになります。
同様に牛乳を早く固まらせたい時にはレンニンの量を増やせば良いのですが、当然少し苦味が出ます。マイルドな味に仕上げたい時にはレンネットの量をきちんと調整する必要があります。

子牛の胃から抽出できるレンニンですが、これは牛の体に牛乳の栄養分を吸収できる形にする役割を果たしています。牛乳をレンニンを通して固まらせないと、せっかくの栄養分を体内に吸収させないまま排出させてしまうことになるのです。
牛乳のカルシウムは3分の1がイオンになって水に溶けています。しかし3分の2は水の中に粒になって混ざっている状態です。レンニンは牛乳のカルシウムがイオン状になっている時に働きますが、粒になって混ざっている時にはには働きません。人体もカルシウムがイオン状になっている時が体に吸収されやすいのです。

種類もたくさんあり、それぞれの特性を知り、使い分けていくことが大切です。
これは、昔ながらの人々の知恵からできた乳の加工品であり、今後もずっと残り、使われていく技術でしょう。

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