酵素-脱リン酸化を触媒するホスファターゼの役割

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ホスファターゼとは

ホスファターゼは水酸基とリン酸との間の結合を加水分解する脱リン酸化の過程を触媒する酵素です。

この反応はキナーゼやホスホリラーゼによって担われているリン酸化の過程の逆反応であり、このリン酸化と脱リン酸化を利用することによって生体内では様々な分子の制御が行われています。その特性によって様々な種類があり、至適pHとその局在によって酸性ホスファターゼ、アルカリホスファターゼといった分類のされ方をすることもあれば、脱リン酸化を触媒する基質の違いによってプロテインホスファターゼなどといった分類がなされることもあります。

さらにプロテインホスファターゼはその基質特異性や活性の本態によってリンタンパク質ホスファターゼや金属イオン依存性ホスファターゼなどに分類されたり、脱リン酸化を受けるアミノ酸残基の種類によって、チロシン、セリン、アスパラギン酸ホスファターゼといった分類が行われます。タンパク質の翻訳後修飾としてリン酸化は広く行われており、シグナル伝達や活性の発現においてリン酸化と脱リン酸化をへて制御されているケースが多数あり、生体内において重要な役割を担っています。

一方、これらの酵素の血液中の濃度が疾患の指標としても用いられています。
例えば、アルカリホスファターゼは肝臓や腎臓、小腸等の臓器を中心として全身に存在していますが、血液中の濃度は低い状態が保たれています。しかし、肝臓などの組織が損傷すると血液中の濃度が上昇するという現象が観測されます。そのため、この酵素の血中濃度の高さが主に肝臓の機能の指標として用いられます。同様にして前立腺酸性ホスファターゼの上昇は前立腺がんが発生した際に上昇しやすいことから腫瘍マーカーとして医療の現場でもがん検診においては常にモニタリングされる検査値となっています。このように、脱リン酸化が生体にとって重要である故にその分布の異常自体が臓器の機能異常として解釈されることもあるのです。

ホスファターゼの役割

ホスファターゼは脱リン酸化を触媒することによってタンパク質や糖等の生体内物質からリン酸部位を取り除きます。
これに対してキナーゼは生体内物質をリン酸化することでリン酸との結合を形成させます。
これらが共同して様々な分子に作用することによってその機能の制御がなされています。特に基質特異性の高いタンパク質ホスファターゼや糖新生にかかわる酵素の場合には特異性の高いシグナル伝達経路が形成され、それによって大局的に生理機能が制御されていることがあります。

例えば、飢餓状態においてピルビン酸やグリセロールなどからグルコースを産生する糖新生経路においては最終的にグルコース-6-リン酸が合成されますが、このグルコースとリン酸の結合を切断するのがグルコース-6-リン酸ホスファターゼであり、この酵素の力なくしてはグルコースを作り出すことはできません。

また、血糖値のコントロールに置いて重要な役割を果たしているインスリンですが、インスリンは細胞膜にあるインスリン受容体に作用することによってインスリン受容体がキナーゼ活性を有するようになり、様々な分子をリン酸化して細胞内にシグナルを伝えます。これに対して負の制御を行うことが知られているのが細胞質型のタンパク質チロシンホスファターゼであるSHP-2と呼ばれるタンパク質です。

このようにして、リン酸化と脱リン酸化のバランスを利用することによって生体内分子の機能を制御している場面が多く、インスリンのように両者を拮抗させることによってちょうど良い程度のシグナルが伝達されるように調整がなされています。

特異的なホスファターゼは様々な生体分子の作用を伝達する際に、その機能のオン・オフを制御することによって伝えられる情報の程度を調整する役割を果たしています。こういった制御が行われることによって生体の恒常性が保たれており、キナーゼとホスファターゼの作用は生体の維持に不可欠なのです。

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